案件に対する目利きの機能
紹介した事例にもあるように、資金と人材をCoEに集結させてDXを進めようとしても、事業部門がついてこないというパターンは少なくないと思われます。
そのような場合には、経営層が方針を出したとしても、ミドルマネジメント層や現場へと降りていく中でどんどん矮小化されてしまい、大きな果実が得られないという状況になります。
一方、成功している企業においては、データサイエンティストが必要となる前段階で、何を目的に取り組むかのコンサル的な部分から、現場とともに取り組んでいます。まずは、ともに課題を発掘し、定量的な効果が見込まれるかどうかを見極めつつ、KPIで優先順位を判断しながら取り組んでいくと良いでしょう。
また、中央集権的な手法を採っている会社では、予算が経営の意向などに左右されてしまうケースもあります。それを避けるために、案件を個別に直接獲得して進める考えもありますが、案件の発掘にかかるコストを個別の会社や部署で営業費用として扱うには厳しい場合もあります。
TCAでは、事業会社から個別の案件を獲得する後者の手法を採っています。この形式では、コンサル部分が営業費用とみなされることもあるため、コストが回収しきれずに苦労することもあります。
落としどころとして、うまくバランスをとるということが大切になってくると言えるでしょう。
TCAのような会社は、データドリブンなコンサルファームであるという特徴があります。データサイエンティストまで繋げられない案件に対してコンサルに入ってしまうと、結果を出すのが厳しくなります。そのため、なるべく初期の段階で案件の見通しを立ててコントロールできる機能をもつことが望ましいと考えられます。
分析部門の支援という形で入った案件でも、当初はばらばらと相談が来る内容について、各々どのように扱うのかをクリアにしていくことからスタートしたという事例もあります。
最初の案件の立ち上げ支援を担う機能が中部電力の経営戦略本部にあるだけでも、大きく違ってくると考えられます。
DXにかかる課題について自ら気づくこともあれば、外の目が入ることで初めて分かる課題もあります。その意味でコンサルの機能をしっかり持つ必要があり、中部電力グループとしてはTCAの協力を得つつ、着実にソリューションへと繋げていくことが重要だと言えるでしょう。
TCAが取り組んだある案件で、データ活用という視点だけでなく、そもそも業務の型をどうするのかについて取り組んだ事例があります。この事例では、データ整備の話だけでなく、データの活用方法や、業務のあるべき姿まで全般的に話ができるような良い方向に転がっていきました。ここで実践を積んだ人が次のリーダーになるという、好循環を作ることもできます。
実際のところ、現場の方々はデータの活用に関して、自分たちの業務を効率化するというよりも、現状の業務にプラスして使うという認識を持っています。一つの大きな問題はこの点であり、誤った認識を解きほぐすところから支援することが必要です。
Vol .7 DXの成功に向けて① に続きます。