第二回アドバイザリーボード
- Vol.1 TCA推進案件の状況と課題(1)
- Vol.2 TCA推進案件の状況と課題(2)
- Vol.3 AI導入・拡大の成否を決める要素
- Vol.4 AIを活用するための仕組み~拠点戦略/AI CENTERの事例~
- Vol.5 中部電力グループのDX戦略とTCAの機能
- Vol.6 経営戦略の中のDX
第二回のアジェンダは、AI導入によるDX推進の仕掛けと人材育成について。
AI導入・拡大の成否を決める要素<アドバイザリーボードVol.3> の続きです。
AIを活用するコラボレーション環境の整備
- ACN保 科
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会社の仕組みを構築する際には、外部の知見を入れることが大事です。
AIを社内で開発し使いこなす能力と社外の知見を使いこなす能力、どちらか片方の能力だけでは駄目で、両方を使いこなすことができる企業が成長できています。
ACNが東京・麻布十番にイノベーション・ハブ東京を作ったのもこのような背景からであり、実証実験の観点からは福島にイノベーションセンターも設けています。
TCAでもこのような機能が必要になる可能性があると思い、紹介させていただきます。
AI CENTER6つの機能
- ACN保 科
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AI CENTERの機能は、6つあります。
1つ目の機能「AIラウンジ」は、端的に言うと案件をサポートし、形づくっていく機能。今はオンラインになりますが、アサイン相談会では時間を決めて各案件に対するアドバイスを実施しています。
AIに関わるディレクター陣が必ず全員集まり、提案内容の精査や実現方法に対するアドバイスをします。それに加えて最も重要な点としては、ここを通過しない案件には、データサイエンティストを割り当てないということです。
一方で、カジュアル相談会という気軽にAIについて相談できる場も設けています。
AIラウンジは、リスク抑制と拡大への貢献、具体的には以下の2点を設置の目的としています。
1つは、割り当てられたデータサイエンティストのスキルに見合った仕事内容になっているか、成長できるかを見極められるようにすること。これは、データサイエンティストが分析と関係ない仕事をしてしまっていることがあったためです。
また、提案を行う中で勝手にAIに関連する人の名前や商品が使われてしまうこともありました。責任を持って提案するという観点からもこのような仕組みを作っています。
まだ出来て1年経っていませんが(2021年7月時点)、既に100を超える案件をさばいており、その中でデータサイエンティストを割り当てたのは58%。その場の相談で終わるものもあったため、人の割り当てについては適正化できたと考えています。
もう1つは、適材適所の観点です。この分野であれば日本一と言えるようなデータサイエンティストが、ただデータ収集をしているような事例が見られたためです。
現状の課題としては、カジュアル相談会の「カジュアル感」がまだ足りていないこと。私自身も発言しすぎる時があるので、いろいろと意見交換がしやすくなるようにしなければと反省しているところです。
今はリモートで開催していますが、コロナ収束後には集まって話ができる場所を開設すべく準備しています。
チームごとに週一回は集まって会話する場として、また、チーム外の人も集まって色々と情報交換できるようにしたいです。
AIセンターの2つ目の機能に「AIスタジオ」があります。データサイエンティストとしても慣れた分野であれば、提案時においてどのような結果が出るのか想像がつきます。しかし、定性的な提案ではなく、具体的な、例えば金額効果まで示すためには、実データで結果をシミュレーションして提案を行うべきでしょう。このように本格的にデータを用いた改革を取り組む前に、素早く分析をおこなう機能がAIスタジオです。
いろいろなアルゴリズムが用意されており、エキスパートがクイックにデータ分析を行い、課題の所在や金額効果について見当をつけてから案件に取り組んでいます。
外部データもAIスタジオの機能に集めています。まずは外部データだけでも分かる部分があり、それに加えて業務で使っているデータを組み合わせることで生まれうる結果を示すようにしています。
3つ目の機能として「AIラボ」があります。これは、提案を行う際に使用する商品や販売の型を持っておくというもの。型を増やしていくと同時に、案件を実施する中で共通化してきたものを型として整理しています。
先手を打って行う部分、実施している案件から整理する部分があります。
4つ目の機能「AIユニバーシティ」は教育機関として、教育するための専門家を集めた部隊です。ここは非常にニーズが大きいですし、社内教育の必然性はアクセンチュアの中でも強く感じています。
どこまでの範囲をトップデータサイエンティストが教育し、どの部分をデータサイエンティストでなくとも教育が上手い人の方に任せるのか、といった適正化も行っています。
AIアーキテクト、データサイエンティスト、データドリブンコンサルタントの3つの内容で、入門者や実務者、営業者の心構え、エグゼクティブまで用意しています。こちらも設置から1年経っていませんが、既に社内1,000人近くに教育を行っています。
数時間程度のちょっとした内容ではなく、例えば基礎アナリティクストレーニングは丸2日間を使います。冒頭に私が少し講義し、その後座学でPythonにおいて一通りサンプルの機械学習ができるようになるまでの内容となっています。
AIやアナリティクスの専門部隊でないビジネス コンサルティング本部の社員も全員が受講するよう展開しています。
5つ目の機能は「AI COE(Center of Excellence)」です。さまざまな案件に取り組む中で似たような案件を複数実施することがあります。それをセンター化・共有化することに加え、非常に専門性の高い人材を中央に集めてピンポイントで時間貸しすることで業務を効率化しています。正直なところ、このような仕組みがないと需要に対応しきれないですし、知識の分散化を防ぐ意味合いもあります。
6つ目の機能は「AIリサーチ」。このリサーチ機能を設けている理由は、先進的な知識を身に付けるためです。目先の商売だけでなく、一歩先を考えながらサービスを作っていかなければなりません。ヘルスケアの領域では、例えば、外部の医療機関と生活習慣病予測モデルを開発したり、臓器移植のマッチングモデル、投薬シミュレーションを開発したりすることをAIリサーチの機能で手掛けています。
中部電力と絡みそうなところでは、京都大学のソーシャルイノベーションセンターと自然災害に関する取り組みも始めています。
- CE 増 田
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コンサルやデータ分析のみならず、中部電力グループの人材を育成する機能の実装を含め、TCAの在り方を早めに規定する必要があります。
紹介いただいた機能の全てを入れ込むのかは別ですが、さまざまな機能を入れ込もうとするとそれなりにリソースや時間が必要になります。
大きな方向性としてTCAがどのような機能を持って地域のDXを推進していくかについて、まずコアの機能をある程度整理し、その後は柔軟に変更していけばよいと考えます。
第二回アドバイザリーボード
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- Vol.2 TCA推進案件の状況と課題(2)
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